根室管内、和牛生産地への歩み

9月2日に十勝農協連共進会場(音更町)で行われた第18回北海道総合畜産共進会 肉用牛部門において、根室管内代表 山崎 幸雄さん出品の「かんな(父:英貞)」が準最高位賞、未経産最優秀賞及び肢蹄賞を受賞されました。これを受け「かんな」の共進会に向けての取り組みについてお話を伺いました。

ジェネティクス北海道 英貞産子写真 山崎幸雄様
かんなと幸雄さん(第18回北海道総合畜産共進会 肉用牛部門にて)

根室管内について

根室管内は1市4町で構成された北海道最東端に位置する地域で基幹産業は酪農であり、乳用牛に適した冷涼な気候や、広大な土地・草資源を活用し、人口の8万人よりも多い約18万頭の乳用牛が繋養されています。黒毛和種については、黒毛和種専業農家は少ないものの、乳用牛と兼業で繋養されている方が多く、近年では乳用牛を借り腹とした受精卵移植による産子が多く生産されていますが、その多くが地域のスモール市場で販売されるという特徴的な生産形態となっています。

「かんな」生産者 山崎幸雄さんに話を聞いて

幸雄さんは、もともと黒毛和種の繁殖と兼業で酪農経営も行っていました。後に、事業拡大のために搾乳を辞め、(株)ROCKY RIDGE YAMAZAKIを設立し、現在では乳用牛の預託牛 約250頭と黒毛和種繁殖雌牛25頭(うち経産牛10頭、未経産牛15頭)を繫養しています。社名の由来は、「ROCKY RIDGE=山脈のように中標津という土地に腰を据え、広く、頂点を目指す」という意味が込められており、奥様の正子さんが命名されたそうです。

幸雄さんが現在繋養されている繁殖雌牛は、中標津和牛生産改良組合で鹿児島県より導入した1頭から受精卵移植等を利用し繁栄していきました。

幸雄さんは「分娩を重ねても体型が崩れない牛」を目指し、特に後肢の構造に優れ、体長のある牛を残すようにしているそうです。以前、牛群をこの改良目標に近づけるためにより理想的な体型を持った繁殖雌牛を3頭まで絞り、現在は10頭まで増頭しました。積極的に全国の種雄牛の情報を集め、その中からより体型と産肉能力のバランスの良い種雄牛を交配していくことで改良を進めているとおっしゃっていました。

若い頃には乳用牛の共進会に出品していましたが、黒毛和種については10年ほど前から中標津町の共進会に出品し始め、昨年度から開催されている根室管内和牛共進会には、今年度初めて出品されたそうです。

北海道総合畜産共進会へ向けての取り組み

本共進会で準最高位賞を受賞した「かんな」の名前の由来はアイヌ語から来ており、「再び」という意味を持ちます。正子さんが命名し「繁殖牛、肥育素牛どちらになっても命を全うし、再び私たちの元へ戻ってきて欲しい」という願いが込められています。

母牛「らら」は体型審査83.0点を獲得し、体上線の強さや骨格構造に優れた牛で昨年度の第1回根室管内共進会への出品も考えていたそうですが、月齢が部の構成に合わず、断念したそうです。2産した現在も好体型を維持し、今後の活躍を期待しているとのことでした。

「かんな」は母牛ととてもよく似ていて生まれて間もない時から正確な骨格構造を持ち、また品のある牛だと幸雄さんが感じ、繁殖牛として保留されました。性格は温厚であり頭が良く、特に共進会に向けた調教時にそう強く感じたそうで、追い運動を行う際も調教3日目にはすんなり歩くことができたそうです。「かんな」の強みについて幸雄さんは「胸の強さ、正確な骨格構造、しっかりと体重を支えることできる肢蹄だ」とおっしゃっていました。

ジェネティクス北海道 英貞産子写真 山崎幸雄様
体型審査を受けるかんな 得点は88.6点
(令和6年1月19日撮影)

「かんな」は今年度の中標津町農協総合共進会、根室管内和牛共進会そして本共進会に出品されました。「かんな」デビュー戦となる中標津町農協総合共進会では、出品前のアクシデントと栄養度が高かったこともあり4位という結果でしたが、その結果を受け、牛のコンディションをしっかり整え根室管内和牛共進会に臨むことができたそうです。結果は未経産最高位賞を受賞し、審査員の酪農畜産協会家畜登録改良部 岸部長から「全道で十分戦うことのできる牛だ」と講評いただきました。

そこから北海道総合畜産共進会までの1カ月間、幸雄さんと正子さんは牛洗い・追い運動を欠かさず行い夫婦二人三脚で準備してきたと言います。「過去にホルスタインの共進会に出品していたが、ホルスタインとはまったく違う黒毛和種の立たせ方や毛刈りに試行錯誤した」とおっしゃっていました。YouTubeの動画や共進会で賞を取った牛の画像を参考に、立たせた写真を何枚も撮影し、第三者からの意見を踏まえながらより良く見せるための研究をしたそうです。また、和牛改良組合の視察で全国和牛能力共進会に行き、そこで見た出品牛たちをイメージしながら、「かんな」の完成形を思い浮かべ、イメージに近づけるよう努力されました。

「本共進会の『かんな』出品に自信はあったが、予想をはるかに超えた準最高位賞という評価を頂き夢のようだった」とお話されていました。

今後の展望

今後の目標は「かんな」を含めた母系群での共進会出場。

「母と比較して、『かんな』は体積感が増し、肢蹄等の体型改良はできた。次はこの体型を引き継いだまま皮膚や被毛などの資質の面の改良を行っていきたい。そして今後も精力的に共進会へ出品し、上位入賞を目指すことによって当牧場及び根室管内の黒毛和種の評価を上げていきたい」と意気込みを語ってくださいました。

今回、ご多忙の中、快く取材にご協力いただきました幸雄様に深く感謝申し上げ、今後のご活躍をお祈り申し上げます。

ジェネティクス北海道 英貞産子写真 山崎幸雄様
かんなと幸雄さん正子さんを囲んで(第18回北海道総合畜産共進会 肉用牛部門にて)

道東事業所 今井 風冴

第18回北海道総合畜産共進会 肉用牛部門
「かんな」と幸雄さんギャラリー

画像をクリックすると大きく表示できます

「かんな」と山崎幸雄さんの活躍は以下の記事からもご覧いただけます。

他、英貞の情報はこちらからご覧いただけます。