北神居と戦った鹿児島全共 その1 ―北神居の誕生から調教―
昨年10月6日から10日、鹿児島県にて第12回全国和牛能力共進会が開催されました。第1区 若雄に当団より「北神居」号を出品、見事に優等賞5席を獲得しました。その北神居の造成から調教、大会本番での様子などをお伝えすべく、当団職員の小林さん、廣瀬さんに取材を行いました。
H黒-377 「北神居」号
審査得点:87.4点
生年月日:令和3年2月25日
生産者:平取町 賀集 昭知 氏
血統:梅栄福×勝早桜5×百合茂
小林さん
道央種雄牛センター 種畜管理課 所属
勤続22年の種雄牛管理のエキスパート。
前回宮城全共でH黒-293「英貞」の引き手を務める。
今大会でも北神居の調教、引き手を務め、2度目の全共出場を果たす。
廣瀬さん
事業推進部 肉牛改良課 所属
日々、種雄牛造成のために道内外各地を駆け回っている。
前回大会から全共候補牛の造成だけでなく、当団の全共すべてを取り仕切る中心的存在。
北神居誕生!
全共候補牛の造成に動き始めたのはいつ頃ですか?
廣瀬:2018年から母牛探しや調査を行っており、その後採卵等交配を始めたのは2020年からです。
今大会から出品条件のしばりがきびしくなったとか。
廣瀬:これまでも一定水準以上の出品条件が設定されてきましたが、今回はさらに「地域における特色ある系統の再構築を将来にわたって担うことのできる種雄牛」という条件が付加されました。北海道で古くから代々保留されてきたびらとり和牛育種組合の「やまとみ55」系、十勝和牛育種組合の「第1やまさかえ」系の二系統の中での取り組みとなり、各系統の中で種雄牛造成を取り進めることとなりました。
その後、北神居が生まれてくるまでにも困難があったとお聞きしました。
廣瀬:当団は「やまとみ55」系での取り組みを行うこととなりました。母牛の体型、産肉能力を確認して取り組みましたが、受胎状況を含め、様々な条件にあう繁殖雌牛が2頭のみ。そこへ通常の採卵だけではなく、OPU技術を活用しましたが、雄牛の生産が思ったよりもあがらず、非常に苦戦しました。
「北神居」という名号の由来は何ですか?
廣瀬:引き手の小林さんが発案です!生産地の平取町は北海道でもアイヌ文化の拠点の一つで、名号からも北海道の牛であることが全共の舞台でも皆さんに伝わると思い決定しました。
事業推進部内でもどんな名号が良いかなと話していました。一番印象に残っているのは「梅男爵」(父の梅栄福から一文字とった)です。無事にかっこいい名号になって良かったです!
北神居を初めて見たときの印象はどうでしたか?
廣瀬:無事に生まれてきてくれて本当に良かったと思いました。損徴もなく、導入できる!と嬉しかったです。
小林:体がうすいな…と。全共で勝負できるか少し不安でした。まだ人馴れしておらず、警戒心いっぱいという感じ。
毎日コツコツ調教
調教を始めたのはいつ頃ですか?
小林:本格的に始めたのは4月。繋ぎ運動をメインに行いつつ、人馴れさせるために北神居にぴったりくっついてブラッシングしたりしていました。
北神居は小林さんに懐いているように見えましたが
小林:懐っこいタイプではないので、人馴れさせるためにかなり時間をかけました。最初はくっつくと嫌がっていました(笑)1ヶ月くらいで馴れましたね。
北神居の房の横でずっとラジオをかけていたのも印象的でした。人の声、ざわめきに慣れされるための工夫です。餌箱も北神居だけの特別仕様でした。肩付きが悪くならないよう、顔を下げなくても餌を食べられるようになっています。至れり尽くせりです。
その後の調教は順調でしたか?
小林:5月のGW明けから追い運動を開始しました。最初から思ったより歩けていました。全共用に作った砂地運動場で歩かせ、足腰を鍛えました。長い時間歩かせるより、柔らかい地面を短時間歩かせた方が、負担が少なく鍛えられるかなと。6月頃からは土日も出社して、ほぼ毎日やっていました。
和牛とホルスタインでは調教や牛の引き方がまったく違います。和牛は追い綱一本で、牛の右後ろから指示を出します。牛のお尻を手で押したり鼻環を引っ張ったりする訳ではなく、追い綱を引いたり牛の頬に当てたりして指示を出します。
英貞のときはかなり苦労されていたとお聞きしました。
小林:英貞はなかなか言うことを聞いてくれず、止まったら動かず、歩き始めると引きずられ…という感じで大変でした。北神居もなかなかやんちゃではあるんですが、英貞より優秀でしたね。
調教のとき、北神居はどんな様子でしたか?
小林:追い運動を開始すると、最初はスタスタ歩いてくれるんですが、飽きてくるとノロノロと致し方なく歩くという感じで(笑)。そうなってくると歩かせるのはちょっと大変でした。
確かに全共本番でも、審査会場入場時スタスタ歩いていました。小林さん!ほら、行くよ!!という感じの勢いで、元気いっぱいの様子がかわいかったです。
全共出発前に日本装削蹄協会の阿部優副会長に北神居の削蹄について最終確認していただきました。当団種雄牛の削蹄は熟練の職員が行っていますが、全共直前ということで北神居だけ阿部副会長にチェック・仕上げを行っていただくというVIP待遇です。阿部副会長、ありがとうございました。
本記事では、その1として北神居の誕生から調教までお伝えしました。
次回その2では、鹿児島道中から全共本番についてご紹介したいと思います!
ぜひ、その2も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!!
その2、鹿児島道中から全共本番の記事を公開しました!(2023年2月2日)
ぜひこちらもご覧ください。
事業推進部