遺伝的能力評価に係る変更点
2011年8月から遺伝的能力評価が変わりました。
1 新たな形質の遺伝的能力評価を開始しました
(1)難産率
遺伝的に難産が起こる可能性を確率(%)で表した評価値です。
① 産子難産率
産子の父としての効果で、種雄牛A を交配し受胎した雌牛が分娩する際のA の効果です。
産子難産率は、従来、分娩難易として評価していたもので、その評価方法や表示方法を変更したものです。産子難産率の公表を機に、分娩難易の評価を中止するとともに難産出現頻度の公表も中止しました。
② 娘牛難産率
娘牛の父としての効果で、種雄牛A の娘牛が分娩する際のA の効果です。
(2)死産率
遺伝的に死産が起こる可能性を確率(%)で表した評価値です。
① 産子死産率
産子の父としての効果で、種雄牛A を交配し受胎した雌牛が分娩する際のA の効果です。
② 娘牛死産率
娘牛の父としての効果で、種雄牛A の娘牛が分娩する際のA の効果です。
(3)BCS(ボディ・コンディション・スコア)
一般に、適切な栄養管理を行うために用いられるBCS を、他の線形形質と同様に体型的特徴として捉えたもので、(社)日本ホルスタイン登録協会が審査した記録をもとに評価を開始しました。従来の線形形質と同様にSBV(標準化育種価)で公表し、グラフを示します。
2 遺伝的能力評価(在群期間)の精度向上を図りました
在群期間は、雌牛が生まれてから淘汰されるまでの期間が遺伝的能力評価用の直接的なデータであるため、娘牛が牛群内で活躍中の種雄牛についても評価を行うためには、在群期間に関係のある形質も利用する必要があります。
最新の情報をもとにして、在群期間に加え、初産乳量、体細胞スコア、肢蹄、胸の幅、鋭角性、乳房のけん垂、乳房の深さ及び前乳頭の配置を利用した遺伝的能力評価に変更することにより、比較的新しい種雄牛の信頼度が30%程度から60%程度に向上しました。
なお、在群期間は、これまでと同様に97(在群期間が比較的短い)~103(在群期間が比較的長い)の7 段階で公表します。評価値1 区分の違いはおおよそ1.8ヶ月です。
3 遺伝的能力評価の表示を変更しました
(1)SBV グラフ
SBV グラフは、様々な形質をゼロを中心とした左右に伸びる棒グラフで示すことによって、当該種雄牛がベース年(現在は2005 年)生まれの平均的な雌牛に比べてどのような特徴を持つのかを視覚的にイメージできるよう工夫されたものです。
体型の線形形質の中で、特に、尻の角度、後肢側望、蹄の角度、前乳頭の配置、前乳頭の長さ、後乳頭の配置及びBCS は、生産寿命との関連から見て、極端なスコアの場合に淘汰の危険性が増すと考えられていることから、これら7形質について、ベース年生まれの平均的な雌牛がスコア5(後乳頭の配置はスコア4)となるSBV グラフ上の位置に☆印を付すことによって、交配種雄牛選定の一助となるよう工夫することとしました。
(2)気質、搾乳性
気質及び搾乳性は、分娩難易とともに平成9 年から遺伝的能力評価を行ってきましたが、遺伝率が低いこと等から、これらの形質が必要以上に重視されることのないよう、97~103 の7 段階の評価値の内、中央値である100 に集中するような区分方法が採用されていました。分娩難易の評価を中止し、新たに難産率の評価を開始したことを機に、気質、搾乳性を一般的な区分方法に改めます。
4 新たに長命連産効果が開発されました
総合指数(NTP)とは別に、泌乳能力の改良速度はある程度抑制されるものの、生産寿命(耐用年数)の延長や繁殖性の改善に重点を置いた指標として、長命連産効果が(社)日本ホルスタイン登録協会により開発されました。
後代検定に係る候補種雄牛の選定や検定済種雄牛の選抜は、従来どおり総合指数(NTP)を指標として行いますが、選抜された精液供給可能種雄牛の中からは、利用者のニーズによって長命連産効果を指標とした交配種雄牛の選定が可能となります。
産乳成分(40) | 耐久性成分(40) | 疾病繁殖成分(20) | |||||||||
乳脂量 | 無脂固 形分量 | 乳脂率 | 在群 期間 | 肢蹄 | 乳房 成分 | 尻の 角度 | BCS | 体細胞 スコア | |||
11 | 23 | 6 | 26 | 4 | 8 | 2 | 14 | -6 |
表 長命連産効果の重み付け